夏の記憶
今週のお題「夏うた」
「もうあと半分もないじゃない、卒業まで頑張ってみたら?」
と、母。
社会人になって何年も経つ現在なら、私もそう思うのだけれど当時の私には高校に通い続けるという選択肢がなかった。
周りの反対を押し切っての中退。
高2の秋だった。
学校では真面目で大人しいタイプ。
おそらく周りのみんなは私がこんな突拍子もないことを言い出すなんて思ってもみなかっただろう。
でも、実際の私は違った。
母が何かを選ぶときによく言っていた
〝人と同じじゃつまらない〟
という言葉が頭に残り、人と何か違うことをしないといけない、といつも何かを探していた。
音楽活動をしてみたり、少し派手なファッションに身を包んでみたりもしたけど、全然自信がなかった。
大きな声で喋るいつもハイテンションな子たちが正しいと思っていて、そうじゃない私は間違ってると感じていた。
今となってよく考えてみたら、
〝実際の自分と理想の自分との間で上手く落とし所を見つけられず、
その歪みによる苦しさに耐えられなくなり逃げ出した〟
というのがおそらく中退した大きな理由だろう。
高校を中退した翌年の夏。
高校生活でよく一緒にいたA子から、
「遊ぼう」
と連絡が来た。
この子といるのが私は苦しかったんだ。
しかし私は
(「今の私なら大丈夫」)
そう思い、遠方の海へ行く約束をした。
そして迎えた当日。
海へは電車で向かった。
長めの距離。
途中、持参した音楽プレイヤーのイヤホンを片方ずつ耳に当てて音楽を聴いた。
カセットテープの中に入っていたのは、
サザンオールスターズとラッツ&スター。
私 「どっちが好き?」
A子「えー私はサザンかな。どっち?」
私 「ラッツ&スター」
A子「そう言うと思ったよ」
どっちが正しいとかではない。
好みの問題。
夏になると今でもこの時のことを思い出す。
そしてA子は順調な人生を歩んでるだろうなぁと思うが、もう知る由もない。